図書館で読書を終えて外に出てみたら、けっこうな勢いで雨が降ってた。
こんな時だけ梅雨らしい天気にならんでも・・・


というわけで、今日は読書感想文。最近読んだ本を2冊まとめて。

『アッチェレランド』(2009年 著者:チャールズ・ストロス 訳:酒井昭伸 早川書房)
アッチェレランド、イエメンで鮭釣りを

『イエメンで鮭釣りを』(2009年 著者:ポール・トーディ 訳:小竹由美子 白水社)
アッチェレランド、イエメンで鮭釣りを
『アッチェレランド』
タイトルは音楽用語で「少しずつ速く」を意味する言葉で、
タイトル通り、2010年から始まる21世紀を舞台に、
徐々に加速していく世界を描いたサイバーパンクSF。
2006年度のローカス賞受賞作で、9つのお話からなる連作短篇集になっている。
ちなみにポニ〇に苦しめられながら読んでたのはこの本です。

加速する、といっても某神父のスタンドのような話ではなく、
思考や情報伝達の速度、いわゆる「世の中のスピード」が速くなっていくということ。

冒頭からいかにもさいばーぱんくな用語や変な人物がいっぱい出てきて、読んでてクラクラする。
最初はまだ現代に近いのでなんとかついていけたが、
終盤になるとさっぱり理解できない文章が出てくることもしばしば。
エコノミクス2.0は、従来型の貨幣経済のような単一の間接的(インディレクション)レイヤーや、
オプション取引をはじめとする多重の間接的マッピングを廃し、それを狂気ともいえるほど奇怪きわまりない、
パラメータ化されたプレイヤーの欲求と主観的・経験的価値に基づく、
ある種のオブジェクト=リレーショナル・フレームワークで置きかえてしまった。
(本文411ページより)

ってどういう意味だよ。原作の雰囲気を保つために仕方ないんだろうけど、もうちょっと頑張って日本語に訳してほしかった・・・

しかし開き直って「そうか、オブジェクト=リレーショナル・フレームワークで置きかえてしまったのか」と
理解した気になって読んでいけば、なかなか楽しめた。

んだが、ちょっと話が長すぎるんじゃないかとは思った。分厚い、文字小さい、しかも二段組みというトリプルコンボで、何度か挫折しかけた。せっかくの「世界の加速度」体感が、話の長さで削がれてしまってるような・・・僕の集中力が散漫なだけか。

自分では思いもつかないような世界を見せてくれる、という点で、凄くSFらしいSFだったと思う。

ちなみに著者のチャールズ・ストロスはオープンソース・プログラマでもあり、
非商用利用に限って原書を無料で全篇公開してるそうな。欲とかないんかこの人。




『イエメンで鮭釣りを』
今月号の本の雑誌で豊崎由美がオススメしてた本。
豊崎由美は書評読んでてなんとなく趣味が似てるなあと思ってる(もちろん向こうのほうがはるかに守備範囲は広いが)ので、わりと本選びの参考にしてる。

優秀な水産科学者である主人公、アルフレッド・ジョーンズ博士が、
イエメンの大富豪から「イエメンで釣りができるように鮭を繁殖させる計画を立ててほしい」というとんでもない依頼を受ける。
最初は乗り気でなかったものの、依頼主の人柄にひかれてプロジェクトを進めるうちに、首相官邸やアルカイダまで巻き込んだ大騒ぎに発展して・・・という、普通小説のようなコメディのようなSFのようなお話。

作風も独特で、いわゆる「地の文」での描写は一切なく、
作中の人物たちが交わした手紙、Eメール、調査報告書、新聞記事などなどの文書のコラージュのみで構成されている。

この構成に面食らって最初はちょっと読みづらかったが、慣れてしまうと訳文自体はすらすら読めるし、
お話もテンポ良く進んで一気に読み進められた。

「砂漠の国に鮭を導くことができれば、神の奇跡に少しでも報いることができる」と心から信じる依頼人は、
狂信者と言えなくもないが、その姿はとても穏やかで、魅力的に感じられた。

プロジェクトがどう進められていくのか、そしてその進行にともなって登場人物たちの心情がどう変化していくのか。先が気になってぐいぐい読める、名作だった。

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Posted by t-sa at 18:54│Comments(0)読書
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